『2018宗祖降誕会法話』

 

 

浄土真宗のご開山、親鸞聖人の生きられた時代に於いて、当時の常識をくつがえし、仏教僧として、初めて公に結婚して家族を持たれた方でした。

八百年以上昔の人たちにとって、僧侶とは出家して俗世間から切り離された所で、覚りを開くために日々精進する聖なる存在であり、肉食妻帯などもってのほかという常識がありました。ただ、隠れて掟を破る僧侶もいたそうですが、誰も表だって結婚するような僧侶は誰一人としていませんでした。

そんな時代に於いて、親鸞聖人は法然上人と運命の出遇いをされ、師の導きに従い、阿弥陀如来の救い、お念仏申すことの真の意味を知らされたのでした。お念仏の教えは、僧侶達、つまり聖(ひじり)であっても、武家、商人、そして農民、漁民ら俗人であっても、男性も女性も、悪人も善人も差別することなく、ありのままに生きる人間を、阿弥陀如来はそのままで、平等に救い取って下さる事を学び、この教えこそが、煩悩も多く、日々忙しく生きる私たちにとって最も適した真実の教えである、と、確信を持たれたのでした。

法然上人は、無理に禁欲を強いらず、肉も食べ、結婚も許される、これは自然の人間のあり方であり、この普通の暮らしのままで誰もが平等に「往生」出来るものであることを親鸞聖人に説かれたのでした。そして親鸞聖人に対して、妻帯することにより更にお念仏を称えることができるのであれば、婚姻もすることを認めようと仰って下さり、ついに聖人はご結婚を決意されたのでした。

親鸞聖人は、お念仏の教えを真に理解した証として、それを体現すべく妻帯され、僧侶をやめることなく自分の体を張って、教えを実践されたのでした。この親鸞聖人のお心を思う時、私たちはこのみ教えに今出遇得ているその有り難さをかみしめずにはおれないことです。

今日皆様と共に、降誕会をお勤めし、親鸞聖人の誕生をお祝いできましたことを嬉しく思うことです。今日はようこそお参り下さいました。

合 掌

開教使 渡部重信